共同出版という名の自費出版に150万をつぎこんでしまった件

小説を本にして出版したい。小説を書いている人なら、おそらく誰もがそう思うでしょう。もちろん、文学賞に応募して新人賞をとって、書籍化――という流れが一番理想的ですが、仮に文学賞をとったからといって、必ずしも書籍化されるわけではありません。

たとえば、地方の文学賞なんかは、大賞を受賞したとしても、新聞や自治体のようなところで発行している同人誌みたいな本に、佳作の作品と併せて出版されたりします。言葉は悪いですが、共同墓地みたいな感じです。当然、一般の書店に並ぶことはまずありません。アマゾンでさえ買えないことも多いです。

また、大手の文学賞であっても、必ずしも書籍化されるわけではありません。それぞれの文芸誌のみでの掲載に留まる場合が多いのです。それだけ近年はとくに、書籍化することのリスクを出版社側が警戒しているということです。

500冊で150万の著者負担は妥当なのか?

当然ですが、どこの出版社も慈善事業をしているわけではないので、いくら作品の質が高くても、出版費用とそれに携わる従業員の人件費さえ回収できないような作品を出版することはできません。

さらに、近年は小説を読む人より、書く人のほうが増えている事情もあり、ならばと、読者ではなく、小説の書き手をお客様とする、「共同出版という名の自費出版」というビジネスが横行するようになりました。

で、都内のある出版社から、その共同出版のためにぼくが支払った金額は、約150万円です。130ページくらいの中編小説を500冊書籍化してもらった値段です。この試算がどれだけ妥当なのかはわかりませんが、もちろん出版社側の取り分も含まれているとは思います。

ただし、この試算も含めてこれからお話しすることは、15年くらい前の話で、また出版社や本のジャンルによっても基準は違うでしょうから、あくまで一つの目安として考えてください。

 

「賞」をエサに、共同出版を売り込む手法

ぼくが出版した本のジャンルは、自殺が合法化された近未来のSF小説です。自殺をビジネスとした自殺演出家という職業があり、65歳以上の人間は65歳以上というだけで犯罪者として収容所に収監し、その高齢者収容所から買ってきた老人連中を、自殺志願者の前座パフォーマンスとして焼き殺す――とか、要は中二病バリバリのどうしようもない小説でしたが……

まあでも、発想の斬新さがそこそこ受けたようで、その出版社は共同出版のための賞を設けていたのですが、なんとそれで3次選考まで通過することができたのです。

が、残念ながら最終選考で落選して……というより、おそらくそう仕組まれていたような気もしますが……というのも、入選を逃したものの、すごく可能性がある素晴らしい作品だからと、わざわざ原稿用紙4,5枚くらいの丁寧な書評まで送ってもらい、ぜひ共同出版という形で出版させてください!という出版社側の熱意という名の営業に、無知だった当時のぼくは、まんまと心を許してしまったわけです。

 

「共同出版」の本が書店に並ぶことはほぼない

編集担当者は女性の方でした。ぼくの作品の他にも10作品ほど同時に編集作業をしていると聞いて、ちゃんとやってくれるのか?すごく不安になりました。

案の定、本が出来上がった後に誤植が5個所以上もみつかってしまい……まあ、ぼく自身が見落としてしまっていたのが一番悪いのですが、とにかくそのために訂正用紙みたいなものを500冊ぜんぶに入れ込むのに、さらに2万円くらい支払いました。

で、肝心の売り込みのほうは、その出版社が独自に経営していた書店(出版社と併設されていた)にのみ陳列されただけで、ぼくが知る限り一般の書店には一冊も並んでいません。それでも、アマゾンや楽天などのネットサイトではちゃんと販売されたので、まあ地方の文学賞よりは宣伝効果はあった?のかもしれませんが……。

 

ブログで安定したアクセスと人気を得れば、出版社なんていらない?

とはいえ、結局ぼく自身の友人たちと、指で数えられる程度の人が買ってくれただけで、初版として発行された500冊はほぼ全部売れ残ってしまいました。

で、もう出版社は当てにならんと、そのうち50冊くらいを自分で買って、自ら書店に売り込みに回ってみたものの、当然ですが体よく追い返されてしまいました(笑)

ええ、今となっては笑い話にできますが、当時はそのために自己破産もしたので……しかもちょうどその頃に、史上最年少の芥川賞作家が注目されたりもして、要はさんざんな精神状況でした。

というわけで、本気で小説家を目指すなら共同出版は絶対にやめるべきだと、個人的には思います。というより、小説というのはそもそも売るべきものではないかもしれない――とさえ、今のぼくは思っていますが、まあそのことはまた別の機会にお話しさせて頂くとして……

とにかく、小説家として世に出るにはブログを書いたほうがいいの記事でもお話ししましたが、大手の出版社にさえ売り込みが期待できない今の時代は、ネットを使って自分で売り込むしか方法はないだろうと思います。

そう、アクセスをとって人気さえでれば、出版社側から勝手に声がかかるでしょう。というか、安定したアクセスと人気を得てしまえば、出版社なんかいらないも同然です。書籍化したかったら、ブログで稼いだお金で自費出版すればいいわけですから。なんていったら出版社の人に怒られるかもしれませんが……(苦笑)

 

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